カラダから始まる政略結婚~一夜限りのはずが、若旦那と夫婦の契りを交わしました~
ふと、そんな考えが頭をよぎって驚いた。心配事があるにしろ、無意識に彼に会いたいと思うだなんて今までなかった。
広い家は、ひとりで過ごすと余計にさみしい。いつのまにか、ふたりで暮らすことが当たり前になっていたんだ。
「変なの。これじゃあ本当に、愛する旦那の帰りを待つ妻みたい」
ぽつりと呟いて、自分でもおかしくなる。
あの人に対する感情が恋や愛なのかはわからないけれど、出会った頃より確実に彼との間に信頼が芽生えたのだと実感した。
和カフェも、素人の私のアイディアを取り入れた上で成功させようとしてくれている。若女将としてはまだまだだけど、力になれたようで嬉しかった。
きっと、頭の回転が速い千里さんなら、トラブルをうまく乗り切ってくれるだろう。
ブブブ……!
茶会当日。十時の開催に合わせて身支度を整えていると、スマートフォンが鳴った。
着信は美澄屋の店舗からで、千里さんかと思って電話に出ると、声の主は若かった。