カラダから始まる政略結婚~一夜限りのはずが、若旦那と夫婦の契りを交わしました~


 予想外のとんでもない発言に、かぁっと顔が熱くなる。


「そ、それは、今は時間に追われていて気にする余裕もありませんでしたし、いつも着付けの練習をしてくださっているじゃないですか」

「慣れたんだ?恥じらう桃が見れなくてちょっと残念だけど、その分上達したね。袋帯もおはしょりも、すごく綺麗にできてた」

「あ、それは鳴海くんがしてくれたんです。私ひとりではまだまだですよ」


 ほんの軽い気持ちで言ったはずだった。

 しかし、その言葉を聞いた瞬間、千里さんの目の光が消えて表情が変わる。


「鳴海に着付けてもらったの?」

「はい。帯だけうまくできなくて……でも、そのほかは、ちゃんとひとりで」


 言い終わらないうちに、両手で頬を包まれた。

 見上げた先には見慣れないスーツ姿の彼がいて、ドキリとする。

 至近距離でちゃんと顔を見たのは初めてかもしれない。わずかに眉を寄せた表情はどことなく不機嫌そうで、胸がざわめいた。

< 92 / 158 >

この作品をシェア

pagetop