カラダから始まる政略結婚~一夜限りのはずが、若旦那と夫婦の契りを交わしました~
予想外のとんでもない発言に、かぁっと顔が熱くなる。
「そ、それは、今は時間に追われていて気にする余裕もありませんでしたし、いつも着付けの練習をしてくださっているじゃないですか」
「慣れたんだ?恥じらう桃が見れなくてちょっと残念だけど、その分上達したね。袋帯もおはしょりも、すごく綺麗にできてた」
「あ、それは鳴海くんがしてくれたんです。私ひとりではまだまだですよ」
ほんの軽い気持ちで言ったはずだった。
しかし、その言葉を聞いた瞬間、千里さんの目の光が消えて表情が変わる。
「鳴海に着付けてもらったの?」
「はい。帯だけうまくできなくて……でも、そのほかは、ちゃんとひとりで」
言い終わらないうちに、両手で頬を包まれた。
見上げた先には見慣れないスーツ姿の彼がいて、ドキリとする。
至近距離でちゃんと顔を見たのは初めてかもしれない。わずかに眉を寄せた表情はどことなく不機嫌そうで、胸がざわめいた。