旦那様、離婚はいつにしましょうか~御曹司と清く正しい契約結婚~
 彼は鼻で笑っている。
 はったりだと確信しているのだろう。

 こんな人が好きだったなんて。

 最低! 私の貴重な二年半を返して!


 思いきり叫びたい衝動を必死に抑えてゆっくりと立ち上がる。


「わかったわ、そうする。どうぞお幸せに」


 そして作った笑顔で言い放ち、コーヒーに手をつけないままリアンを飛び出した。

 店を出た瞬間、頬に涙が伝ったのに気づいたが、拭う気力すらなかった。


 なにがいけなかったの? 
 どうして相手は紀子なの?


 聞きたいことが山ほどあるのに、ふたりの間にはもう赤ちゃんがいるという現実の重さに完全に負けてしまった。


「ずるいよ……」


 新しい命が宿っていると聞かされて、紀子と別れて私のところに戻ってきてなんて言えないでしょう? 

 いや、親友に手を出した隆二さんを、許せるわけがない。


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