旦那様、離婚はいつにしましょうか~御曹司と清く正しい契約結婚~
 結婚前に彼の本性が知れてよかった……と何度も思おうとしたけれど、そんなに簡単に納得できるほど物分かりはよくなかった。


 結婚適齢期にとっくに突入しているこの歳で、浮気されて振られるなんて情けなくて、自分であきれる。


 周囲の人がちらちらと私を見ているのがわかっているのに、涙が止まらない。

 このままでは電車に乗れないと思った私は、歩いて五分の会社に戻ることにした。

 まだ残業している人がいるかもしれないが、トイレの個室にでも入って気持ちを落ち着けようと思ったのだ。


 大雑把に頬の涙を手で拭い、ビルに足を踏み入れる。

 うつむき加減で一階のトイレを目指して歩いていると、目の前に誰かが立ちふさがった。


「七瀬?」


 その声は……相馬さんだ。

 最悪だ。まさか上司に会ってしまうとは。


「どうかした?」
「いえっ、なんでもありません。お疲れさまでした」


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