旦那様、離婚はいつにしましょうか~御曹司と清く正しい契約結婚~
 視線を合わせないまま彼をよけて進もうとしたのに、強い力で腕をつかまれてしまい立ち止まるしかなくなった。


「ちょっと来い」


 彼はそのまま社屋を出て、大通りでタクシーを止めたあと私を押し込む。


「相馬さん?」

「飲みに行こうか。チームの人間とはできれば仲良くやりたいからね」


 私の話をまだ覚えているんだ。

 そういえばあれから彼は、物腰が柔らかくなった。

 相変わらず的確で厳しい意見は言うものの、そのあと今までの功績に対するねぎらいをつけたり、努力を認めるような発言をしたりしている。


 そのうちチームの皆が、仕事に対する彼のストイックな姿勢と成功への熱い思いに気がつき始め、今に至る。


 意見をぶつけ合いながらも、互いの発言に耳を傾け、一丸となって高みを目指す。
 そんなスタイルができつつあるのだ。


「いえ、帰ります」
「ダメだ。帰さない」


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