お見合い夫婦!?の新婚事情~極上社長はかりそめ妻を離したくない~
「それじゃ、私はこれで失礼するわね」
「えっ? 文代さん、もう帰られるんですか?」
まだお互いに名乗り合ったばかり。ここで仲人役の文代はもう退散するなんてあんまりだ。
「私がいたら邪魔でしょ? あとは若いふたりでゆっくり語らってちょうだい。あなたたちふたりは、きっとうまくいくと思うわ」
そんな気はどうか回さないでほしい。どこをどう見たらそんな発言になるのか果歩にはわからないのに、文代はやけに自信たっぷりだ。
「そんなに急いで帰らなくてもいいんじゃない? おばさんもケーキでも食べてからにしたらどう?」
晴臣の誘いにもなびく様子はなく、「私はいいのよ。とにかくふたりで仲良くしてちょうだいね」とひらひら手を振る。本気で帰るつもりらしい。
今ラウンジで晴臣に熱視線を送っている女性たちだったら、飛び上がって喜ぶような誘惑だ。
それなのに彼女は、衣擦れの音をさせてラウンジから出ていってしまった。せっかく着物を着てきたのにと余計な心配をするのは果歩だけか。
その背中を見送った視線を真正面に向けると、晴臣と目が合った。取り残された者同士の共感というのか、ふっと笑みをこぼし合う。本題はまだこれからだ。