悪役令嬢には甘い言葉は通じない。
非常食として私がこっそり取っといてあるお菓子の存在に気づいているなんて、この男……中々やるわね。
でも変なことをせずにこのお菓子だけで解決するというのなら、戸棚の中にある焼き菓子全部あげても別にいいでしょう。
「お目当てのもの、それですわよね?まったく……家には専属のパティシエがいることを知っていて、ここまでするなんて貴方中々度胸があるのね」
「え、あの、これって?」
「甘い甘いお菓子でしょう。見たら分かるじゃない」
どこをどう見ても焼き菓子にしか見えないというのに、この男はやっぱり変わっている人なのかもしれない。
「もしかして、君ってよっぽど世間知らずだったり?」
「うるさいわね。どうせ私は箱入り娘ですわよ」
なんで言われた通り焼き菓子を手渡したというのに、こんな事を言われなければならないのよ、腹立たしいわ。
そっぽを向いて、私はさっさと帰れと言わんばかりにしっしっと手を振った。