悪役令嬢には甘い言葉は通じない。
その後自分用であろう仮面を被ると、もうどこの誰だか分からない。
「一応、お忍びで来てるわけだしね。それに今夜は変装しないと」
ふふっと小さく笑ったルーベルトに引かれるがまま、私は初めての街へと踏み出した。
楽しげな音楽がどこからとも無く聞こえ、道行く人達全員が仮装をして、馬も馬車も家も何もかも私の目に飛び込んでくるもの全てが何かに仮装して可愛らしく彩られている。
慣れた足取りでルーベルトは道を進んで行き、拓けた広場には大きな噴水にもカボチャで飾られていた。
そこに並ぶいくつもの露店からは、見たことの無い料理が売られている。
「わあ……!すごいわ!」
「まずはちゃんと準備しておかないと、ね?」
連れられるまま歩いていくと、一つの露店に立ち寄ってルーベルトが様々なお菓子がたくさん入った籠を購入する。
それを私に手渡すと、どこからか子供達がやって来た。
「トリック オア トリート!!」
そう叫んでお化けの格好をした子供達が、私と似たようなキラキラした瞳を向けてくる。
困惑する私に優しくルーベルトが耳打ちしてくる。
「お菓子を渡してあげて」
言われるがままお菓子を子供達に配ると、嬉しそうにはしゃいで私と同じように籠を持つ大人に群がり始めた。
「これは一体何なの?」
「ハロウィンナイトは、悪魔に生贄を捧げる祭りがあってそこから発生した祭りなんだ。今はこうしてお化けに仮装した者がお菓子を配らない人に対して悪戯してしまうというちょっと変わったお祭りに大変身したけど」
「だから、お菓子を配らなきゃだったのね」
納得する私にまたしても同じように子供達から声を掛けられ、私はお菓子を配る。