悪役令嬢には甘い言葉は通じない。
お菓子を配っただけなのに、嬉しそうに笑顔を浮かべる子供達に妙に癒されるのはどうしてなのかしら。
こんな感情、生まれて初めて。
「ちなみに、お嬢様も変装しているからお菓子貰えるんだ」
「そうなの?」
道行く人に声を掛ける勇気なんてないから、私からは行けないけれど。
なんてそう思っていたのに、ルーベルトが通りすがりの女性に声を掛ける。
「麗しきお方、僕にお菓子をくれないと悪戯しちゃうよ?」
「えっ、あ、それはそれで嬉しいかも……」
なんて頬を赤らめながらも、ルーベルトが冗談さと笑って見せると女性も笑ってお菓子をルーベルトに配った。
離れていく女性を見送るルーベルトは、得意げな表情をしてみせてくる。
私の頭に顔を近づけてくんと髪の匂いを嗅いで、満足そうな笑みまで浮かべてくるなんて。
「そんな顔しないで。俺は、君以外の女性には興味ないかーー」
「いいわ、その勝負乗ってあげますわよ!」
ルーベルトの言葉なんか遮って、今度はこの私が通りすがりの男性の手を取った。