五年越しの、君にキス。




「よかった。ここにいた」

パーティー会場のカーテンに身を隠して蹲る私の前に、ストンと影が落ちる。

たぶん、離れていた時間は一時間にも満たない。

それなのに、顔を伏せた私の耳に届いた伊祥の声がひどく懐かしくて、泣きそうだった。


「待たせてごめんね。行こっか」

伊祥が優しい声で誘いかけてくれるのに、私は立ち上がるどころか顔を上げることすらできない。

「りーらっ。顔あげて」

動こうとしない私の頭に伊祥が手をのせる。

よしよしと頭を撫でてくる温かい手のひらの誘惑に負けそうになったけれど、腕に額を押し付けてなんとか耐えた。

行くって、どこに?伊祥は今まで何をしてたの?

私なんかを選んだせいで、誰に頭を下げていた?


本当のことを知ってしまった今、どんな顔で伊祥と向き合えばいいのかわからない。


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