五年越しの、君にキス。

まるで記念日を大切にしている彼女想いの彼氏みたいな提案に絶句したら、威圧的な笑みを浮かべた伊祥がしっかりと脅しをかけてきた。

『和風カフェの仕入れ先のお茶屋さん、他にもいい候補が見つかりそうなんだ』

伊祥はお見合いのときにうちの茶屋のことを絶賛してくれていたし、実際のところ、本気で他のお茶屋さんを仕入れ先に選ぶつもりなんてないと思う。

だけど、たとえ冗談でも柳屋茶園と美藤ホールディングスとの契約を盾にとられたら、私は伊祥の言葉に従わずにはいられない。

伊祥は相変わらず『脅しじゃなくて、口説いてるんだ』って主張してくるけど。

どう考えたって、私を従わせるための脅しだ。

だいたい伊祥は、学生時代に付き合っていたときからいつも強引だった。


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