五年越しの、君にキス。
「私はまだ仕事があるから、今日のお昼はひとりで食べてきたら?」
「そう言って、断る気?」
さりげなくランチの誘いを断ろうとしたら、その目論見は秒で伊祥にバレた。
笑顔の伊祥が、打ち合わせをしている事務所のドアを無言でチラッと見る。
本気で企画をつぶすつもりがないのはわかっているけれど、事あるごとに、「従わないならどうとでもできる」という態度を取ってくるからタチが悪い。
「わかった。早苗さんたちの打ち合わせが終われば、お寿司でも何でも行きます。店を無人にはできないから、少し待って」
諦めてため息を吐く私を見て、伊祥が唇の端を満足げに引き上げる。
結局、最後に折れてしまうのはいつも私だ。