五年越しの、君にキス。
あとになってから、それはたまにお世話にくる伊祥付きの家政婦さん(あのときから、冬木さんだったのかもしれない)が用意したものであることがわかって。
看病しに行ったことがきっかけで、結果的に伊祥との距離が縮まって付き合うことになったのだけど……
伊祥が今日私に卵粥をリクエストしたのは、彼も付き合う前のあの日のことを覚えているからなんだろうか。
できたてのお粥を蓋付のお碗によそいながら、ほんの少し期待してしまう。
お粥を持って伊祥の部屋のドアをノックしたら、何の反応もなかった。
勝手に入るのは少し気が引けたけれど、体調の悪い伊祥のことが気になるのでそっとドアを開けさせてもらう。
キングベッドとシングルソファーが余裕で入るくらいに広い伊祥の部屋は、薄暗くて静かだった。
サイドテーブルに置かれた暖色のライトの光が、眠っている伊祥の顔を仄かに照らしている。
私は伊祥を起こさないようにお粥の載ったお盆をサイドテーブルに置くと、静かに彼の部屋を出た。