五年越しの、君にキス。
カーテンの端に手をかけると、ドキドキしながら一気に引き開ける。
だけど、開いたカーテンの先に伊祥の姿はなかった。
確かにすぐそばに気配を感じたのに。
あれ?と思って首を横に傾げたとき、足元でカタンと何かが床に落ちる音がする。
ふと下を見ると、伊祥が床に跪くようにして試着室の前にシルバーのヒールの靴を置いていた。
「靴、これ。サイズ合うか履いてみて」
膝をついた伊祥が、にこりと笑いながら私に手を差し出してくる。
私を見上げる伊祥の表情や膝をついたその仕草は、なんだかやけにさまになっていて。御伽噺の絵本から抜け出してきた王子みたいだ。
ドキドキしながら伊祥の手をとって、用意された靴につま先を通す。
伊祥の見立てなのかどうか知らないけれど、サイズはちゃんとぴったりだった。
「サイズ合ってる?」
私を見上げて首を傾げた伊祥に、コクコクと何度も頷いてみせると、彼が私の手をとったまま立ち上がる。
そのときに初めて、ドレス姿の私を正面からとらえた伊祥が、僅かに目を見開いて黙り込んだ。