五年越しの、君にキス。
伊祥の顔を茫然と見上げると、彼が悪戯っぽく目を細めて私の手をとる。
そのまま指を絡めるようにして手を繋がれて、胸がドクンと高鳴った。
「行こう。この上にある店で、仕切り直し」
私の耳元に甘い声でそうささやくと、伊祥はパーティー会場の出口に向かって颯爽と歩き始めた。
その途中でまた何人かに声をかけられたけれど、伊祥はやっぱり軽く会釈を返すだけで、決して立ち止まらない。
早足でずんずんと進んでいく伊祥の背中からは、一刻も早く会場を立ち去りたいというオーラが出まくっていた。
よっぽどこのパーティーが嫌だったんだな。
苦笑いを浮かべながら、少し前を歩く伊祥の背中を追いかける。
けれどパーティー会場の出口のそばまでやってきたとき、それまで早足で歩いていた伊祥が急に立ち止まった。
その背中にぶつかる寸前でなんとか歩を止めた私の耳に、低い声が届く。
「伊祥、どこに行くんだ?」
伊祥の背中の後ろからそっと顔を覗かせると、会場の入り口には伊祥のお父様が立っていて、私たちのことを訝しむようにじっと見ていた。