五年越しの、君にキス。


「あー、伊祥さんが来られていたのはあのせいじゃない?」

「あのせいって?」

「ほら。伊祥さんがほぼ決まりかけていたお嬢さんとのお見合い話を蹴って、どこかのお茶屋の娘さんとの結婚されたって話、知らない?」

「あー、そういえば。お見合い相手のお嬢さん、美藤ホールディングスの大手取引先だったのよね?お相手側のご両親が、ひどくご立腹だったっとか」

偶然聞こえてきてしまった噂話に、お皿を持った私の肩がビクリと震えてしまった。

どういうことだろう。私はそんな話、伊祥から聞かされていない。


「大手どころじゃないわよ。実はさっき、美藤ホールディングスの代表取締役と伊祥さんが、四ノ宮グループの代表に頭を下げているところを見ちゃったの。声を荒げている感じではなかったけど、近寄りがたい物々しい雰囲気で。あれはきっと……」

「あぁ、伊祥さんがお断りしたお見合い相手のお嬢さんって、四ノ宮グループの……」

周囲を気にして声のトーンを押さえた彼女たちの会話は、すぐ前に並んでいる私の耳にしっかりと届いた。


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