アオハルの続きは、大人のキスから
「サイン、書きました」
「あとで、一緒に出しに行こうか」
「はい」
二人でほほ笑みあっていると、スタッフから声がかかる。そろそろ時間だ。
「さぁ、行こうか。小鈴」
久遠の大きな手が差し伸べられる。その手に迷いなく手を乗せ、小鈴は頷いた。
ベリーヒルズショッピングモール屋上の日本庭園上空は、雲一つない晴天だ。
突き抜ける青空は、十年前に久遠と別れた日の空と似ている。
空を見上げ、この空の下に久遠がいるはずだ。そんなふうに空を見上げることは二度とない。
小鈴の隣には、これからの未来、ずっとずっと久遠が隣にいるのだから。
「久遠さん」
「ん? どうした、小鈴」
不思議そうに小鈴を見下ろす久遠に、耳を貸してほしいと手招きをする。
腰を屈めて耳を貸してくれる久遠に、小鈴は囁いた。
「愛しています」
言い慣れていない言葉に照れくささが込み上げるが、今どうしても言いたくなったのだ。
恥ずかしがる小鈴を唖然とした様子で見つめたあと、スタッフがいる前で久遠は我慢ならないとばかりに紅を差している唇に食らいついた。
スタッフが「時間ですけど」と慌てる中、ホテルのGMらしからぬ表情の久遠は、小鈴の唇を何度も堪能する。
だが、このときの二人はまだ知らない。
出来上がった挙式用のパンフレットの表紙には、熱烈なキスをする二人が掲載されることを。
「小鈴、愛している。もう……俺から離れるな」
「はい」
白無垢の花嫁は、一粒涙をこぼす。その涙は秋風と共に綺麗に昇華した。
FIN


