ライオン王子に飼われたネコさん。
(紅羽は真白が大好きだから幸せになって欲しいのよ。……まぁ、私も魔女だから面白がってるところが百%ないかと言われると弱いけどね。)
おどけたようにウインクをした後、真剣な目で問う。
(さぁ、真白。あなたにとっての本当の幸せを得るためにはどうしたらいいと思う?)
別れてから一ヶ月。
「もう」というべきか「まだ」というべきか。
一ヶ月では気持ちは変わらない。
ならばもっと時間をかければ変わるのか。
約二十二年もの間、初恋さえ知らなかった。
それだけの年月をかけて漸く出会えたのが怜音。
次に会う人は一体どれくらいの時間がかかるというのか。それでもいつか、時間が解決してくれるだろうと思っていた。
けど、無理なのだろう。
過去を思い返し、分かったことがある。
怜音以上に好きになる人にはきっともう出会えないし、あの男以上の男がいるはずがない。
怜音でなければ意味がないのだと。
煌めくブロンド、冷酷で獰猛なアンバー、肉食獣の王たるライオンのように圧倒的なオーラ。
誰をも惹きつける彼からどれだけ逃げようと、ただのOLが逃れる術などなかった。
無関心そうに見えて誕生日はしっかり覚えていてくれるところや、怠惰に見えて仕事はいつも真摯なところ、面倒くさがり屋のくせに案外何でもできるところ。
実は頭が良くてクイズ番組を一緒に観て真白が誤答するとちょっとだけ馬鹿にしてくるし、浮気性だし、必要な言葉は全然言わないし。
腹立たしいことも許せないところも沢山あるけれど、結局は惚れた方が負けで愛しいと思ってしまうのだからどうしようも無い。
五年間も一緒にいた。
一方的に別れを告げて距離をとり、どれだけ逃げ回ったって心が納得していないからいつまでも引きずっている。
今更だとしても、怜音と話をして決着をつけなければいつまで経っても前に進めないだろう。
あの金髪美女は誰なのか。
本当に結婚するのか。
それなら何故真白を手放さなかったのか。
聞きたいこと、言いたいことは山ほどある。
(……とっとと契約破棄して、真っ向勝負でぶつけてやろうと思います。)
きっと全部ぶつけたところで引きずるものは引きずるだろうが、今よりはずっとマシだ。
もしも怜音が本当にあの金髪美女を愛していたとしても、もう一度告白しようと決めた。
(未練を無くすために。)