ライオン王子に飼われたネコさん。
「何かあった時のために連絡先を交換しておこう」
そう言われ、交換したのが三十分前の話だ。
お風呂から上がり、ふとテーブルを見ればクレジットカードと怜音のルームキーが置かれている。
いくら泥棒が入る確率は限りなくゼロに近いセキュリティ抜群の高級マンションの上層階とはいえ、何が起こるか分からないのに剥き身のままでおく不用心さに真白はため息をついた。
とりあえずどこか引き出しにでも片付けておこうとルームキーに手を伸ばし、首を傾げる。
キーに刻印された番号がどう考えても怜音のものではなく、向かいに住む銀のものだったからだ。
「銀ちゃん、間違えて怜音の方を持って行っちゃったんだ」
連絡することなどないだろうと思っていたら、すぐにかけることになってしまった。
「あー、本当だ。間違って持って来ちゃったみたい。最悪だ。今日、仕事納めだからってスケジュールパンパンで帰るの深夜なんだよなぁ」
二十四時間エントランスにいるコンシェルジュに言えばキーは貰えるだろうが、クタクタの体で手続きをするのはしんどい。
「マンションに着く前に連絡してくれれば私が開けるよ」
「こらこら。夜更かしは良くないよ。まだ仕事まで時間あるし、今から取りに帰るから着いたら開けてもらっていい?」
「了解」