ライオン王子に飼われたネコさん。

「私、そんなにボーッとしてたんだ」

自覚はあったがそこまで酷いとは思っていなかった。
ボーッとしてしまう原因が何かは分かっている。

それに対する対処もしていたつもりだったが、思っていたよりも効果はなかったらしい。

「やっぱり、元カレさんとの別れがショックで?」

「……まぁ、そんなとこかな」

一応は自分から別れを切り出しているのでショックというわけではなかったが、似たようなものだ。

どこへ行って、どこを見ても怜音はいる。

家の中でさえ、テレビをつければ彼はいるのだから逃げ場なんてどこにもない。忘れようとしているのに忘れる時間を与えてくれない。

なるべく見ないようにしているのに、見て仕舞えば心に足枷がついたように動けなくなってしまう。

一ヶ月やそこらでは心は囚われたままだ。


赤江がほろ酔い気味になってきたところで解散し、真白はある人へ電話を掛けた。

『あ〜ら、どうしたの?』

スピーカーから思わずぞくっとしてしまうような色っぽい声が聞こえてきた。

「今日、来てる?」

『だ〜いじょうぶ。来てないからいらっしゃい』

誘われるがまま、真白は行きつけのバーへ向かった。


大通りを抜け、ビルの隙間を縫って歩き続けると小さな森のような場所に辿り着き、その入り口にはログハウスがある。

周りはビルばかりで行き交う人は足早なのにそこだけは緑豊かで、時間がゆっくり流れているように見え、いつも別世界に迷い込んでしまったような錯覚に陥ってしまう。

そのログハウスこそが真白が来たかった場所。

知る人ぞ知る隠れ家バー"魔女の家"。

大学生時代に偶然見つけたその店は社会人になった今でも定期的に足を運ぶお気に入りの店だ。


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