ライオン王子に飼われたネコさん。
ウェルカムチャイムのシャララという音と共に店の中に入ると、薄暗い店内の中にぽぅっと浮かび上がる暖かな光。
ピンクや水色、薄紫の花を模したガラス製のキャンドルホルダーがライトアップされて幻想的な空間になっている。
現実的なことを言うとすれば、ホルダーの中のキャンドルはLED製。
店主曰く、「本物の蝋燭を使うと室内濃度が心配だし〜。火事になったら怖いじゃな〜い?」と。
「いらっしゃ〜い!待ってたわよ〜」
両肘をカウンターに置き、両頬をその手で支えた状態でお出迎えする女店主。
今日も今日とて露出の激しいドレスに身を包む彼女がそうしているだけで何故だかお色気ポーズに見えてしまうのはきっと真白のせいではない。
白い肌に真っ赤な唇、切長の目には長いまつ毛が影を落とし、その目元にはハートの黒子。
ゆるく波打った長い黒髪をかきあげる時なんて妖艶さの塊と言っていいだろう。
真白があと二十歳分年をとったとしてもこの妖艶さは手に入れられない。
魔女の家というバーの年齢不詳の女店主、紅羽に向かい合うカウンター席に座った。
「今日はだ〜れも来てくれないから退屈でね〜。真白ちゃんが来てくれて嬉しい!いつものでい〜い?」
「お願いします」
紅羽はニコッと微笑み、背後の棚から一本お酒を取り出した。
他の人がやれば気怠げな印象を受けるゆっくりな動きでお酒を作る紅羽だが、彼女がすると何故だか全てに色気があり、品もある。
どうすればこんな人になれるだろうかと一時期は考えたりもしたが、これは彼女が異次元すぎて何一つ真似はできない。
時間が止まったような場所にある店の主人もゆったりと動くので、本当にここだけ時間が遅く感じられる。
コンクリやガラス一面に覆われたビルの中でこのログハウスだけが非日常。
コトン、と音がして差し出されたカクテルに顔をあげる。
部屋のあちこちにあるキャンドルの光に反射したガラスがに照らされて妖艶に微笑む紅羽。
「さぁ。私に話してごらんなさい」
瞬間、真白は泣きながら怜音とのことを話すのだった。