ライオン王子に飼われたネコさん。
面倒くさがり屋だから自分から別れを切り出すのが面倒。
だけど、自分の身の回りの世話をしてくれる女を一人くらいそばに置いておくのも悪くない。向こうから別れを切り出すまでは存分にこき使おう。
なんて考えていたとしたら。
(ありうる!)
だんだんムカムカしてきてカクテルを一気に煽る。
いつのまにか新しいカクテルを作っていたのか空になったグラスはすぐに交換され、それをまた一気に飲み干す。
すでに赤江と飲んでいたのにハイペースで飲んでしまい、頭がぐらぐらし始めた。
途端に閾値を飛び越え、制御不能となった感情が爆発する。
イライラしているのに勝手に涙が溢れてきて、怒りたいのか悲しみたいのか訳がわからなくなる。
どうして浮気するの?何がダメだったの?
その答えは簡単。住む世界が違うから。
だったら次は身の丈に合った恋がいい。
特別なことは何一つない平々凡々な恋。
忘れられればいい。
そして願わくば次の相手が見つかればそれでいい。
たったそれだけでいいのに、家にいようが外にいようが、歩けば見つけ、止まっても聞こえ、彼は神出鬼没なのにどこにでもいる。
テストで覚えたことは反復しないから忘れてしまう。
逆に試験が終わった後も復習すれば忘れない。
だから、彼を忘れる努力をいくらしたって勝手に真白の領域に飛び込んでくるのだから自動的に反復されてしまって忘れることができない。
時間が経てば忘れるというけれど、事故に遭って記憶喪失になるとか、魔法でパッと記憶を消されるとか、そんな非現実的なことでも起きない限りは相当時間がかかりそうだ。