ライオン王子に飼われたネコさん。
「もうやだよ〜!」

もうアラサーなのに子供のようにワンワンと泣き出す真白を「あらあら、泣かないで」と頭を撫でてくれる。

だが、その優しさが余計に涙を誘ってしまう。

困りきった紅羽は人差し指を頬に当て、「う〜ん」と暫し目を瞑り、何やら考えを巡らせ始めた。

「そうだわ〜!」

名案でも思いついたのかパン、と手を合わせてにっこりと微笑んだ。

「逆にお腹いっぱいって思っちゃうくらい一緒にいたらいいのよ〜!」

「へ?」

訳がわからない提案に真白は引き続き涙を流しながらもポカンとしてしまう。

「もう悔いはありませ〜んってくらい一緒にいれば飽きちゃいそうじゃない?四六時中ずーっと一緒にいるの!ついでに思う存分甘えてわがまま放題して困らせちゃえばいいのよ〜!」

「いやいやいや!」

忘れようとしているのにその逆をつく発想はスタート地点に戻ってくるどころか、更に忘れられなくなりそうだ。

酔った頭でも流石にわかる。

「だ〜いじょうぶ!明日から土日だし、平日はこっちで何とかしてあげるわ!どうせ真白ちゃんのことだから有休使ってないでしょうし、なんとかなるなる〜」

「なんとかって!?っていうか有休って!?」

「は〜い!難しいことは考えな〜い!さぁ、飲んで飲んで〜」

冷静になっていく頭に反し、体が勝手に差し出されたカクテルグラスに手を伸ばす。

(なんで!?)

驚いている間もなくお酒を飲み干し、また次のグラスへ。

いくら冷静になろうとしてもキャパシティを超えたアルコールの力には敵うはずもなく、脳がぼんやりしていき、瞼が下りていく。

眠りの世界へ足を一歩踏み出した時、遠くから「おねーさんが魔法をかけてあげる」と、色っぽい声が聞こえた気がした。
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