ライオン王子に飼われたネコさん。

ライオン王子は御立腹

「ふざっけんなよ、あの女」

忌々しそうにチッと盛大な舌打ちと、ガサゴソと物を漁る音が聞こえて来る。

(んー、うるさいなぁ。)

「んにゃー」

近くから猫の声が聞こえると、ガサガサ音は止んだ。
代わりに誰かが近づいて来る気配がした。

パチリと目を開けると、目の前には吸い込まれるようなアンバーの瞳が二つに高い鼻梁、形のいい唇。

羨ましいくらい美しく、真白がよく知る顔面が目の前に広がっている。

(な、な、な、な!?)

言葉にならない声を発し、"後ろに飛び上がった"。

(なんで怜音がいるの!?)

「にゃにゃにゃにゃにゃにゃー!」

「よく鳴く猫だなぁ」

奇遇にも同じことを真白も思ったので、どこかにいる猫に注意する。

(猫うるさいよ!)

「にゃにゃにゃ!」

(ん!?)

何故か自分の発した言葉と同じタイミングで聞こえる猫の声に首を傾げる。

「起きたならこっちこい」

ソファにいた真白に合わせて屈んでいた怜音が立ち上がる。

高身長の彼とは約二十五センチほど身長差があるので顔と顔の距離はいつも遠い。

それは分かりきったことなのだが今日は何故だかいつも以上に遠い。遠いというよりも巨人を見上げている感覚に近い。

(……あれれ〜。なんだか嫌な予感がするぞ〜。)

国民的名探偵のようにすっとぼけてみる。

その嫌な予感が当たらないことを祈りながら怜音の後を追うためソファから降りた。
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