ライオン王子に飼われたネコさん。
がっしりとした腕に温かい体温に自然と瞼が下りてくるが。
「そうそう、そうやって優しく接してやれば一週間の内になついてくれるさ」
その瞬間、カッと目を見開いてもう一度暴れる。
(いけない!私としたことが!懐くなんて冗談じゃない!!)
心を許してなるものかと暴れはするものの、やはり彼を傷つけられないので全力を出し切ることが出来ず、抱っこされたままだ。
「まぁ、うん。結構嫌われてるかもだけど頑張れ。まずは名前をつけてあげないとな」
「取り敢えず一週間は預かることになってるが、飼い主が見つかれば手放す存在だ。懐かれる方が困る」
(ご安心ください!!決して懐きませんので!!)
「短い間でも一緒に暮らすんだからそう言ってやるな。名前を決めてもいいなんてラッキーだと思うべきなんだぞ」
ふわぁ、と手で欠伸を隠しながら眠そうに目を擦る銀。
今度こそ帰ってしまう、と手を伸ばしてみるものの真白の心は全く届かず、ポンと頭を撫でられるだけだった。
「あと、眠る場所ちゃんと提供してやれよ」
そう言って銀は帰ってしまったので、真白にとって気まずい空間の出来上がりだ。
(夢なら覚めて!現実ならば元の姿に戻して!)
真白の切実な願いは届かず、抱き抱えられたまま怜音がソファに深く座り込む。
そして、あろうことか頭から背にかけて、さっき銀河撫でたように撫で始めたのだ。
筋張った手が存外優しく撫でている。ゾクッと背中から脳天にかけて震える。
それは銀に撫でられた時とは違った感覚で、急激に体温が上昇していくのが分かった。
「名前ねぇ」
至極面倒くさそうな物言いにカチンと来つつ、この男が一体どんなネーミングセンスを持っているのか真白は興味が湧いた。
(変な名前だったら笑ってやる。さぁ、来い!)
猫なので笑い声はあげれないが、口角を上げるくらいはできるだろう。