ライオン王子に飼われたネコさん。
「雪」
(安直。)
フスッと鼻で笑うことに成功したら、撫でていた手がピクリとしたのが分かった。
「……み大福」
(しばく!)
素早く後ろを向けばニヤリと意地悪そうな笑みを浮かべていて、真白は悔しかった。
「お前、人間の言葉がわかるのか?」
(やば。)
自分が今猫だという認識が薄いせいで普通に反応してしまったが、普通の猫ならこの反応はありえない。
まずい、と冷や汗をかく寸前、怜音は馬鹿にしたように笑った。
「そんな頭のいい猫だったら捨てられねーわな」
その言葉は猫の真白ではなく、真白本人に言われているような気がした。
頭が良ければ何か変わっていたのだろうか。
グサリとナイフで突き刺されたような痛みに真白はそっと俯いて背を丸める。
傷ついたことがわかっているのかいないのか、怜音は丸まった背を引き続き撫でていた。
しばらくして、ピタリと止まる。
何かいい名前でも思いついたのかもしれない。
だが、真白は後ろを向けなかった。
怜音は何故か真白の一点をじっと見つめている。
ちょうど首の左側の付け根辺りをそれはもう熱心に。
穴が開きそうなほど見つめられ、もぞもぞと体を動かした時だった。
「真白?」
呼ばれた名前にピタリと動きを止めた。