ライオン王子に飼われたネコさん。
魔女さんの魔法
パチリと目が覚める。眼前に広がる眠っていても綺麗な顔にフッと笑ってもう一度目を閉じた。
そして、冷静に考える。どうして別れたはずの元彼が目の前にいるんだ?と。
ズキズキと痛む頭を押さえるも、指という指がなく、ぷにっとした感触が顔に当たる。
そこで真白はどれもこれも夢ではないことを悟った。
「大人しくしてろよ」
そう言い置いて仕事に行ってしまった怜音。
リビングだけでも真白のマンションの部屋の三倍はある。人間だった時でさえ、広く感じていた部屋が猫になってより一層感じる。
とはいえ、猫の真白が行動できる範囲は猫用の機械が置かれたリビングだけだ。
寝室、客室、衣装部屋、バスルーム、その他の部屋は全て扉が閉められてしまっているので猫の姿では開けられない。
別に入るつもりもないのでいいのだが、問題はただ一つ。
部屋の端にある丸っこいフォルムの機械に目をやる。
飼い主に見られないようなちょっとした閉鎖空間で用を足せ、自動で砂が変わるという優れものは猫にとっては最高だったと思う。
だが、人間の真白には厳しい。
とはいえ生き物の摂理には抗えるはずもなく、泣く泣くその中に入り込むしかなかった。
(うう、お嫁に行けない。)
絶賛彼氏募集中、かつ、婚活中なのに丸裸で、機械の中で用を足すという恥辱は真白の女としての矜持をズタズタにされているように思えた。
(トイレの時だけでいいから人間に戻りたい!)
ソファの端で蹲っているとどこからか「いいわよ〜」と、紅羽の声が聞こえてきた。