ライオン王子に飼われたネコさん。
真白はそろりと顔を上げるが紅羽がここにいるはずは無い。
「こっちよ〜」
それでも聞こえる声に導かれるまま、窓辺に近づけば一匹の黒猫がいた。
ここは二十五階だ。猫がよじ登って来れるような高さじゃない。
もしもベランダに猫がいるとしたらお隣さんの猫の可能性があるが、怜音のお隣さんは銀だけ。銀が飼っているのはロシアンブルーで黒猫ではない。
(どこから迷い込んだの?)
「迷子じゃないわよ?」
真白は言葉を発していないのに、心の声に答える黒猫。
それも真白とは違って「にゃー」という猫の鳴き声ではなく、人間の言葉を猫の姿で話している。またも襲ってくる非現実的な光景に空いた口が塞がらない。
(ま、まさか。)
そしてその声の主を真白はよく知っていた。
「そうよ!わ・た・し!」
瞬間、パッと黒猫はいなくなり、代わりに露出激しめの黒のロングドレスに身を包んだ紅羽が立っていた。
いつも夜に会っているので、朝に会うのは実はこれが初めて。
だが、夜であろうが朝であろうが彼女の妖艶さは変わらない。
薄暗い店内で見る彼女は聞き上手で色気に溢れたバーのママという感じだが、朝の光に包まれた彼女はどう考えてもこの世界の人間としては浮いている。
あの幻想的で時間の流れが穏やかな店の中でこそ違和感はないが、一歩外に出れば彼女はどこか人と違う。
日本人でも外国人でもない。異世界からきたと言われたら納得してしまうだろう。
尤も、二十五階にフラッと現れたことも、猫から人間の姿に変わったことも手品にしては高度すぎる。
もっと非現実的で、科学では証明できない力を彼女は持っている。普通の人間じゃないということはすでに確定済みだ。
「こっちよ〜」
それでも聞こえる声に導かれるまま、窓辺に近づけば一匹の黒猫がいた。
ここは二十五階だ。猫がよじ登って来れるような高さじゃない。
もしもベランダに猫がいるとしたらお隣さんの猫の可能性があるが、怜音のお隣さんは銀だけ。銀が飼っているのはロシアンブルーで黒猫ではない。
(どこから迷い込んだの?)
「迷子じゃないわよ?」
真白は言葉を発していないのに、心の声に答える黒猫。
それも真白とは違って「にゃー」という猫の鳴き声ではなく、人間の言葉を猫の姿で話している。またも襲ってくる非現実的な光景に空いた口が塞がらない。
(ま、まさか。)
そしてその声の主を真白はよく知っていた。
「そうよ!わ・た・し!」
瞬間、パッと黒猫はいなくなり、代わりに露出激しめの黒のロングドレスに身を包んだ紅羽が立っていた。
いつも夜に会っているので、朝に会うのは実はこれが初めて。
だが、夜であろうが朝であろうが彼女の妖艶さは変わらない。
薄暗い店内で見る彼女は聞き上手で色気に溢れたバーのママという感じだが、朝の光に包まれた彼女はどう考えてもこの世界の人間としては浮いている。
あの幻想的で時間の流れが穏やかな店の中でこそ違和感はないが、一歩外に出れば彼女はどこか人と違う。
日本人でも外国人でもない。異世界からきたと言われたら納得してしまうだろう。
尤も、二十五階にフラッと現れたことも、猫から人間の姿に変わったことも手品にしては高度すぎる。
もっと非現実的で、科学では証明できない力を彼女は持っている。普通の人間じゃないということはすでに確定済みだ。