ライオン王子に飼われたネコさん。
「さぁ、真白ちゃん」

婀娜っぽい笑みを浮かべる彼女に一体何をされるか分からず、ゴクリと唾を飲み込んで彼女の一挙手一投足をじっと見ていると。

「早く部屋の中に入れてちょうだい!」

カタカタと震える体を両腕で抱きしめ、足踏みし出した。

十二月中旬。

怜音が暖房をつけてくれているので気づかなかったが、その日、今年一番の寒さを記録するくらい寒い日だったらしい。


「はぁ〜、あったか〜い!外は寒くて死んじゃうかと思ったわ〜」

(そんな格好してるからでしょうに。)

「猫に変身している寒くなかったんだけどねぇ。人間の姿に戻るとダメね〜」

(人間……。)

「あら。ちょっと人より長生きで、ちょっと人にはない力を持ってるってだけの人間でしょう?」

紅羽は胸に手を置き、心外だとでもいうような表情をしたが口調がどうにも冗談めかしている。

(それは人間とは呼ばないんですよ。)

「じゃあ、私はな〜に?」

真白は目の前にいる妖艶な美女の上から下までを眺め、その風貌、雰囲気、彼女が起こした摩訶不思議な現象の数々に否が応でも一つの答えしか思い浮かばなかった。

小さい頃に憧れて、大人になるにつれて存在しないものだと知ったもの。

(………………魔女。)


紅羽はニコリと微笑んで「正解」と言った。

足を組み、頬杖をつく紅羽と床にちょこんと座る真白。魔女の使い魔的立ち位置。

だが、真白は強気でいく。

(元に戻してください!)

紅羽が魔女だろうがなんだろうが、どうだっていい。一刻も早く人間に戻り、この部屋から立ち去りたい。


「残念だけどそれは聞けないお願いだわ」

全く残念そうに見えないにこやかな笑みを向けられる。真白は縋るように紅羽の足元に近寄った。

(困ります!この姿じゃ仕事に行けないしお風呂にも入れないし、トイレだってこんな……耐えられません!それに、怜音と一緒に過ごすなんて……無理です!)

「真白ちゃんったら昨日のことを何も覚えていないわね〜。口で説明するよりも昨日の映像を見せた方が早いか」

紅羽のほっそりとした指が真白の額に当てられる。

ぽうっと小さな光が灯された瞬間、真白は昨日のことを全て思い出した。
< 33 / 137 >

この作品をシェア

pagetop