ライオン王子に飼われたネコさん。

ライオン王子はYDK


深夜。
玄関が開く音に真白の耳がピクリと反応する。

廊下から漏れる灯りを頼りに怜音はリビングのソファに丸まって寝たふりを決め込むマシロ。

怜音は小さなため息とともにどこかへ行った。

(自分のテリトリーに他人がいるなんて、さぞ嫌でしょうねぇ。)

いや、今は他猫か。
なんて考えていると足音が戻ってきた。

今度はなんなんだと耳を澄ませていると、柔軟剤の香りが広がった。怜音がふわふわのタオルをマシロに被せたのだ。

驚きのあまり目を開きそうになったが必死に堪えた。

暗く広い、暖房で適正な温度に調節された部屋は十分暖かいし、猫にはタオルなんて必要ない。

昨日、銀がマシロの寝る場所を用意しておくように言ったけれど朝方に近い深夜。地下のスーパーに猫用のベットが売ってるはずもなく、ペットショップが開いているわけでもない。

じゃあマシロはどこで寝るのか。

良くて客室のベッド、諦めてソファ。
マシロにはこの二つしかあり得ないと思った。

怜音は基本的に他人を自分の部屋、ましてや寝室に入れることはないからだ。

けれど、マシロの予想を裏切り、連れて行かれたのは怜音の寝室。極上のふわふわベッドの上に寝かせられた。

もちろん、暴れはしたがまるで歯が立たなかったのはいうまでもない。

「大人しく寝ろ」と、一言浴びせられ、仕方なくベッドの端で眠ることにした。

今日も同じようにされては堪らないと、先にソファで寝ていたのは正解だった。

起きるかもしれないのにわざわざ抱き上げてまで連れて行かれることはないだろあという予想は的中。

そこまではよかった。

冷酷で獰猛そうなアンバーの瞳を持つライオン王子は顔も体格も良くて、オーラもあって、正直大抵の人は怖いと思ってしまう。

だけど意外にも、優しいところがあるのを真白は知っている。

(絆されるな!絆されるな!)

ギュッとタオルを抱き寄せると益々香る柔軟剤の香り。

ふと、誰が洗濯をしているのだろうと思った。
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