ライオン王子に飼われたネコさん。

怜音が一人で生活できていたことや夜中にタオルをかけてくれたことが内心どれだけ嬉しかったかを熱心に語った。

そして語り尽くした後に襲ってきたのは寂寥と悲しみ。

もう一人で生活できていることや、別れたのに優しくされて舞い上がりそうになったことが寂しくて悲しい。

(やっぱ、逆効果ですよ。)

「まぁまぁ、まだ一日目だしね」

そう言ってスナック菓子を口に放り込む紅羽をマシロは恨みがましい目で見つめた。

こうなっているのは誰のせいか。

一ヶ月そこらでは忘れられなかったかもしれないが、あと何ヶ月もすれば忘れられたかもしれない。

今のこの生活は飽き飽きするよりもどっぷり沼にハマりそうで怖かった。

「なぁに?欲しいの?」

恨みがましい目を向けていたのはそれじゃない。
それに、猫になんてことを言うのかこの魔女は。

(いりません。)

美味しそうに目の前で頬張られれば羨ましくはなるが
人間になれる時間はたった二時間。お菓子のために使うのはもったいない。

「じゃあ、何か欲しいものはある?」

(欲しいもの……。)

欲しいものではなく、破棄したいものならあるが。

この契約はふっかけてきた魔女本人ですらどうしようもなく、キスをするまでは終わらない。

その瞬間、彼女はハッとした。

(そうじゃん!さっさとキスしちゃえばいいんだ!)


怜音にキスなんて冗談じゃないという思考で頭が埋め尽くされていたせいで気づかなかったが、何て単純。

解決方が一つしかないならそれを実行すればいいだけのことだった。

満足するまで、というならもう十分満足だ。
さっさと終わらせてしまおう。
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