ライオン王子に飼われたネコさん。

猫さんは退屈


マシロは部屋の隅に新たに置かれた心地いい猫用ベッドに寝そべり、欠伸をする。

怜音の家に来てから五日目の水曜日。テレビを見るくらいしかすることがない退屈な日々を過ごしている。

真っ白でふかふかな猫をダメにするこのベッドは一昨日に怜音が買ってきたものだ。値札を見た時の驚きは忘れまい。

彼はマシロが期間限定の居候だということを忘れているのではないかと疑ってしまう。

「使え」と言われ、恐る恐る使い始めたがこれがまぁ、なんとも心地が良よくて、値段なんて忘れて昨日一日はずっとこのベッドでゴロゴロしていた。

猫になる前は「あー、明日仕事休みにならないかなぁ」なんて思う毎日だったが、いざ休みになるとこれだけゴロゴロするのは一日で十分だなと思う。

ましてや、人間でいられる時間はたった二時間なのでできることが限られているし、この部屋は怜音のものだ。

自分の荷物はもうないし、思う存分使ってやろうと思っていた紅羽のスマホも肉球では中々反応してくれずイライラしてしまうので使えない。

そうなるとテレビしかなくなる。

地上波放送の韓ドラや各種動画配信サービスを駆使してここぞとばかりに見逃したドラマや映画、はたまたアニメを一日中観ている。

怜音は基本的にテレビを観ないので履歴が残っていようがおすすめ欄が変わっていようが気付く筈もないのでそこは安心だ。

目がしばしばしてきたら観るのをやめる頃合いで、そうなるとお風呂に入る以外にすることがない。

(いっそのこと掃除でもしてやろうかなぁ。)

自分で片付けるようになったとはいえ、多忙な彼には部屋の細かいところまで掃除をする時間はない。

暇なうちにやってしまおうか。
もう別れたのにしてやる義理はない。
でも、今は居候の身だし。
怜音が勝手にやってることでしょ。

真白の中の天使と悪魔がせめぎ合うように交互に真反対の意見をぶつけ合う。

(……せめてお風呂とトイレは使わせてもらうから掃除しとこ。)
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