ライオン王子に飼われたネコさん。

一度だらけきった体に喝を入れるべく、ぐーっと伸びをして怜音から無断で拝借した服の隠し部屋と化している客室へ向かう。

クローゼットの中身は全て回収してしまい空っぽになっているので、もし万が一開けられでもした時には速攻で怜音の服が見つかってしまう。

あるはずのないものがあるというのは流石に気持ちが悪いと思うので、真白が隠し場所に選んだのはベッドの下にある収納スペースの奥だ。

彼はこのベッドを買う時に全て真白に委ねていたのでこのベッドの下にスライド式の収納スペースがあることを知らない。

おまけに床にまで届くホテル並みの大きさのシーツのおかげで収納スペースはすっぽり隠されているので、絶対に見つからない自信があった。

(使わない部屋を掃除しないだろうしね!)

客室とは言うが、実際は真白しか使ったことがない部屋だ。ほとんど真白のための部屋といっても過言ではなかった。

その使用主がいないのだから掃除をする必要もないし、掃除をするのは真白の役目だったので尚更だ。

(よし!)

着る服は用意した。
あとは人間の姿に戻るだけだ。

さて、それではどうやって人間の姿に戻るのか。

意外や意外、それは至極簡単なことで「人間になりたい」と願うだけで元に戻ることができる。

そこからカウントダウンは始まり、猫に戻ればストップ。人間になればまた始まると言う繰り返しで、二時間のリミットは0時にリセットされる。

把握できなくもないが不安なので紅羽からペンダント式のカウントダウンタイマーを貰った。

見た目はアンティークっぽい銀製のロケットなのだが、開けば電子式のカウントダウンタイマー。

夢みがちな恋愛漫画を好む彼女は時々、嫌に現実的で、それがそのペンダントにも現れているようだった。

それを首から下げ、掃除に取り掛かった。
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