ライオン王子に飼われたネコさん。
掃除を終えてしまうといよいよお風呂に入るしかすることがなくなってしまった。

「今のうちにシャワー浴びとこ」

朝から晩まで仕事の彼は昼に帰ってくることはないとはいえ、油断していると鉢合わせる可能性は大いにあるわけで、ゆっくりとお風呂に浸かる時間はない。

どうせ暇ならお風呂にも浸かりたいけれど、仕方がない。

怜音のTシャツを洗濯機に放り込む。後でバスタオルと一緒に洗濯だ。

二十五階に位置する部屋とはいえ、どこから見られているかわからないので高級マンションによくある夜景を一望できるガラス張りの浴室というわけではないけれど、一人暮らしにしては広すぎるバスルーム。

素早く綺麗に掃除するにはコツがいるのだが、もう慣れたものだ。

「私がいなくなったら誰が掃除するのかねぇ」

自分のテリトリーに他人を入れたくない。
けれど面倒くさいことも嫌。

マシロとして一緒に住み始めてから、怜音が一人で生活できることを知った。

けれど彼の元の性格と多忙さを鑑みればずっとは続かないだろう。

そうなると誰かに頼らないといけなくなるのだが、ハウスキーパーという他人を部屋に入れることはないので、彼が許した人間、例の彼女しかいなくなるわけだが。

果たして彼のお眼鏡に合うような美女が雑用をしてくれるのだろうか。

(……いや、あの男を手に入れるためならなんだってするか。)

かつて自分がそうであったように、きっと他の女もそうだ。
< 53 / 137 >

この作品をシェア

pagetop