ライオン王子に飼われたネコさん。
髪を乾かし、念入りに掃除機をかける。気づきはしないだろうが少しでも痕跡は消しておきたかった。

これだけ色んなことをしてもまだ三十分以上は人間でいられる時間が残っているのだが、後はトイレのために取っておく。

洗濯したてのTシャツとペンダントを隠して猫の姿になる。

本格的にすることがない。

(明日からはルームツアーでもしようかなぁ。)

どれに触れようが何も言われなかった。
当然だ。用意を手伝うことの方が多かったからどこに何があるか把握しておく必要があった。

でも、今は彼女じゃない。
触れる権利は自分で手放してしまった。

(………やめとこ。)

知らないところで赤の他人に部屋を物色されているなんて気持ち悪い話だ。必要最低限以外のものにはなるべく触れないようにしなければ。

(それに、見たくないものまで見ちゃったら嫌だし。)

バスルームや客室にはなかったが、寝室にはもしかしたら一つくらいはあるかもしれない。

女性の痕跡など口紅一つ、いや、髪の毛一つでも御免だった。


(あー、でも、退屈だなぁ。)

壁に背を預けてだらんとする。
猫らしくない体勢で今日も退屈な日を過ごす。
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