ライオン王子に飼われたネコさん。
魔女さんと報告会
八日目の土曜日。
いつも通り怜音は仕事に行き、その入れ違いで紅羽が部屋にやって来て「どうだった〜?」と人の気も知らないで呑気に間延びした口調で聞いてくる。
人間ほどはっきりと表情を作れないのにマシロはブスッとむくれた顔で、紅羽と別れた日から今朝起きた恐ろしい出来事まで全てを洗いざらい話した。
「や〜だぁ!連絡がないから何の進展もないのかと思ってたらそんなことになってたなんて〜!どうしてそんな急展開を迎えることになっちゃったの?」
(知りませんよ!こっちが聞きたいくらいです!)
それになんだ進展って。
この魔女は大好きなドラマや漫画のような感覚で、真白と怜音の成り行きを見守ろうとしているのではないかと薄々感じ始めていたが、本格的にそう疑わざるを得ない発言だ。
しかし、猫の姿だと考えていることが全て垂れ流されている状態なので、まだ訴えることしかできないのだが。
「マシロちゃんのこと気に入ったんじゃない?」
精一杯の睨みも効かず、恐ろしいことを言う紅羽に「やめてください!!」と(実際にはにゃー!!しか言ってないが)声を大にして返す。
こっちは吹っ切るために契約期間をなるべく穏便に過ごしたいのに、気に入られるなんて冗談じゃない。
そもそも、元が人間なのだ。
ずっと猫のままでいるつもりは毛頭ない。
「でも、このままだと俺が飼うって言う日も近そうじゃな〜い?真白ちゃんの話じゃ怜音って意外と警戒心強そうだし〜。わざわざベッドだって用意してたのに結局は一緒に寝てるわけでしょ〜?猫とはいえ、マシロちゃんを気にいる何かがあったんでしょう」
(気に入る何か……。)
そういえば最近やたらと匂いを嗅がれるようになった。
よくテレビで見るペットの匂いを嗅ぐ行為と遜色ないが、一応元が人間なので、首の匂いを嗅がれると「なんて変態なんだ」と思いつつ、逃げ出すこともできないのでその行為を受け入れていたわけだが。
その時に彼は必ず「いい匂いがする」と言う。
それは正しく、彼に気に入られた「何か」の一つではないのだろうか。
(匂いなんてどうすりゃいいのよ……。)
すんすんと匂ってみるが、猫の嗅覚をもってしても自分の匂いというのがいまいち分からない。
今の猫の姿で言うならちょっと獣臭いなくらいがわかる程度。
前の生活なら自分の家のシャンプーやリンス、フレグランス、柔軟剤、とにかく自分の匂いの素になりそうなありとあらゆるものを変えれば少しくらいどうにかできるかもしれないが、今の真白は彼の家の物しか使っておらず変えようがない。
(自分の家の匂いが好きってこと?それとも、)
「真白ちゃん自身の匂いが好きなんじゃな〜い?」