ライオン王子に飼われたネコさん。

今日は十月三十一日、ハロウィンの夜。

赤江たちは仮装して街に繰り出すため終業と同時に大荷物を抱えて退社した。

一方、真白が向かったのはケーキ屋。

予約していたケーキを受け取ってまっすぐに向かうのは自分の借りたマンションではなく、見上げれば首が痛くなる高さでセキュリティ抜群の超高級マンション。

とても一OLが住めるようなマンションじゃないけれど、真白はカードキーを通してコンシェルジュに会釈をし、奥に三つあるエレベーターの一つに乗り込んで迷いなく二十五階を押す。

広々とした廊下にたった二つだけある部屋の一方にカードキーを通して中に入ると靴の片方が裏返っていたので直し、リビングへ向かう。

リビングには開けて放置されたスーツケースと洗濯かそうでないかわからないような衣類や小物類でごった返していた。

ケーキを冷蔵庫に入れ、寝室に向かえばしんと静まった部屋のど真ん中にあるキングサイズのベッドに彼は眠っていた。

そっと寝室の扉を閉め、リビングの片付けに取り掛かる。

洗濯物を干し、ついでに浴室やキッチン、至る所を音を立てないように掃除してお風呂に入った。

お風呂から上がってきた頃にはいつの間にかハロウィンの夜は終わり、十一月になっていた。

深夜のニュース番組をBGMがわりにスマホをいじり出して、メッセージが入っていたことに気づく。

『いつもお世話になっております。桃坂です。明日朝七時に迎えに行きます。本日の夜は一緒に過ごされると聞いております。つきましては六時に彼を起こして頂けないでしょうか?』

「かしこまりました、と」

メッセージは三時間前に来ていたが、今はもう深夜を超えてしまっているので申し訳なさを添えつつ送り返す。

秒速で返事が来た。

『これで安心して眠ることができます!いつも本当にありがとうございます!それでは本日の朝、何卒よろしくお願いします。』

< 9 / 137 >

この作品をシェア

pagetop