ライオン王子に飼われたネコさん。
「ざーんねん、今日も見れなかったなぁ」
口を尖らせる赤江。
赤江は七瀬真白の一つ下で、今この場にいる後輩の中では一番真白と親しい自信があるが入社してから今まで一度も彼女の彼氏の写真を見たことがない。
それどころか、彼氏がどんな人物なのかもよく知らない。
今年で付き合って五年目で、同い年の彼氏ということくらいしか真白は教えてくれない。
「本当に存在してるんですかね?」
少しだけバカにしたような言い方に赤江はムッとした。
疑う気持ちは分からなくもないが、本人がいないからといってお世話になっている先輩を妄想女扱いするのはどうかと思った。
「存在してなかったら合コンに一回くらいは参加してくれたと思うよ」
彼氏がいない赤江は合コンに誘われることが多く、人数合わせに誰か呼んでくれと頼まれるのは毎度のこと。
その度に真白を誘ってみるが「彼氏がいるから無理」と断られる。
(見せたがらないだけで、彼氏がいるのは本当だと思うんだよなぁ。)
「結婚式には呼んでくれるかなぁ」
さっき真白が言った通り現在二十七才で、付き合って五年ならそろそろ結婚の話が出てきてもおかしくない。
その時こそ、見れるかもしれない。
そんな淡い期待を抱きつつ、ハロウィンの夜を心待ちにするのだった。