ライオン王子に飼われたネコさん。
(それだけ好きってことよ。)
お気に入りなのか、今日もキャットタワーの一番上の部屋で寛いでいるルナの声が落ちてくる。薄いグリーンが闇の中でぼんやりと輝きながら、それが優しげに細められた。
(今だって銀は顔よし、性格よしなのに、ちっとも心が揺れないのはあなたの心の中を独占する美しくて酷い男がいるから。そうでしょう?)
神が生み出した造形と言っても過言ではないほど美しく整った顔を盗み見る。
目が合うと柔らかく微笑まれた。
猫のマシロではできないから心の中で苦笑いするしかなかった。
反論の余地もない。
透き通るように真白な肌よりもイエローベースの肌を。シルバーよりブロンドを。
真面目なサファイアよりも獰猛なアンバーに魅了され、求めている。
銀でさえ揺れ動かないこの気持ちを一体誰が掻っ攫ってくれるのだろう?
………そんなもの誰もいやしない。
この世界でたった一人だけが真白の心を奪って離さない。たった一人だけなのだ。
(馬鹿だなぁ。)
この不毛な思いを断ち切り、結婚して子供を産んで、女として幸せになりたい。
だから、いつか時間が解決してくれるだろうと、どんな立場であれ彼の隣に居られる権利を手放したのに結婚なんてできるはずがない。
少なくとも三十までにはという目標は絶対に。
人はどうして、こんなにも愚かなのか。
世界が違うことなんて最初から分かりきっていたし、こんなものは遊びの一つだってわかっていたのに、溺れて、抜け出せなくなってしまった。
顔が整っていなくても、お金持ちでなくてももっと優しくて真面目な人がいい。普通でいい。
ありきたりな幸せでいいと思ったはずなのに。