かりそめの関係でしたが、独占欲強めな彼の愛妻に指名されました
「桐島さんのこと、好きだったんですよね?」
その件に関して、私は桐島さん側から見た意見しか聞いていない。
あとは、先日のたった一時間弱の川田さんの態度しか判断材料がない。
たぶん、そうだったんだろうなというのはただの私の憶測だ。
だから本当はどうだったのかと思い聞いた私に、川田さんはややしてからため息を落とした。
視線はまだ地面に投げられたままだった。
「そう。好きだった。学年で一番頭がよくて、校内でとびぬけて美形だった桐島くんは女子の憧れだったの。誰にでも紳士的で態度に差をつけないところも人気を後押ししていた。桐島くんは誰とも恋愛関係にならなかったから……女子が抱く感情は、アイドルとか有名人に持つものと近かったんだと思うわ」
店内からもれる明かりが、川田さんの長いまつげに落ちる。
綺麗な横顔からは、憑き物が落ちたような印象を受けた。
「私もそのうちのひとりだった。別に、桐島くんとそれ以上の関係を望んだことはなかったの。でも……ある日、父から縁談の話を聞いて、それまでの気持ちはガラッと変わった。あの人が私のものになるんだって考えたら、優越感でどうにかなりそうなほど嬉しくなった自分に気付いたの」
目の前の片道二車線の道路を走る車の走行音。
歩道を行き交う人の足音。話し声。
たくさんの音が飛び交っているのに、川田さんの声がしっかりと耳に届いていた。
言葉に込められた重みがまるで違うみたいだった。