翔ちゃん雨だよ一緒に帰ろ?
「何あのダサい人。もしかして先生の知り合い?てか……彼女じゃん!スマホの中の人だ。うっわー」
いきなり翔ちゃんの後ろから現れた女の子にびっくりした。
「おまえはちょっと黙ってろ」
悪びれない女の子を今度は翔ちゃんがたしなめた。
スラリと背が高くって、艶々の髪をなびかせて。キャミソールにショートパンツで健康的な小麦色の肌をみせつけてる。
胸なんか、太刀打ちできない程のボリューム感。
「翔ちゃんこそ……その子って」
「生徒」
今どきの中学生って、あんなに大人っぽいんだ。
「美緒が話せないなら岡崎に直接聞くけど」
表情のない顔で詰め寄ると、翔ちゃんは岡崎君の腕をひっぱろうとした。
「やめて!」
それは無意識だった。
奥寺さんが認めてくれた手に、乱暴に触れてほしくなかった。
だってそれは岡崎君の歴史で誇りでプライドで……今までだってこれからだって、たくさんのファンが連載を楽しみに待ってる。だから。
「お願い、やめて」
岡崎君の腕を掴もうとした彼の手を、思い切り振り払ってしまった。
大好きな翔ちゃんの手を、こんなにも力強く拒絶した。
「もういいじゃん、先生早く行こ。
時間なくなっちゃう」
女の子にそう言われて翔ちゃんは無言でくるりとこちらに背中を向けてしまった。
「気が多い人なんだね」
女の子が私をチラチラ見て意地悪く笑ってみせた。