夜のすべてでずっとすき
「もう、缶もひとりで開けられるんだよね」
「開けられるようになったよ」
「じゃあ、もう、へいき?」
何が。って。声が。震えちゃって。
ああ、だめだ、速水。
ごめん、速水。
わたしには、まだ、難しかった。
こんな大きな、痛い役目、わたしにできるわけがなかったんだ。
わらっていられなくて、ごめんね。
肉まんの袋を剥いで、しゃがんで、プルタブに指をかける。
「へいきじゃ、なさそう」
なんで、速水までしゃがむの。
しないで、そんなこと。
これが最後にできること、みたいに、しないで。
こんなので最期なんて、やめてよね。
「おいしい、ね」
「おいしいよ」
やっとくちに入れたひと齧りぶんは、おいしくなんてなかった。
ぐるぐるでぐちゃぐちゃな感情は、廃棄の仕方がわからなかった。
飲み込んで、飲み干して、寝れない夜に起きて、気がついたら眠り落ちる。
日々、どうしようもなかった。