夜のすべてでずっとすき
「はんぶんこ、もう、しないの」
「うん。綾元が、食べて」
「ココアの取り合いは?」
「しないよ。綾元が、あったまって」
「いらない!」
大声が出た。したくなかった。しないって決めていた行動をしてしまった。
驚いたように目を見開いた速水は、それすらも夜に溶かされる。
「だって、速水、無理なのに」
「うん、ごめん、無理だ」
「なのに、わたし、だけ、……やだよ」
「うん、でも、──……そうだね」
何かを言いかけて、言葉を止める。
「おれも、綾元いないと、無理だよ」
「じゃあ、」
「だからおれ、もっと元気に生きてほしい」
「生きらんないよ」
「生きられるよ」
「速水がいなきゃ、元気に生きらんない」
「とりあえず生きててって」
もう、無理だよ、なんて、言えなかった。
速水の涙が、夜を反射させて、落ちていく。色の変わらないアスファルト。
速水の存在を否定するアスファルトも、空気も、夜も、ぜんぶぜんぶきらいだ。
わたしの涙はアスファルトの色を変えて、息は白く染まって、からだに夜は透けて見えない。
それなのに、速水、涙だけは夜に侵されなかった。夜を反射させていた。
だから、何も、言えないよ。