悪女のレッテルを貼られた追放令嬢ですが、最恐陛下の溺愛に捕まりました
戸惑いの中、大人しく着いていくと、連れてこられたのは古城から馬車で三十分ほど揺られた先にある市場だった。
「ベルナルド様、ここって?」
「エピナント国でも指折りの規模の市場だ。希少な球根や苗を取り扱う出店も多くある」
辺りには、出店のテントが所狭しと並んでいる。どれもが興味を惹かれるものばかりで胸が高鳴った。
ブルトーワ国では自生しない植物がいっぱい。薬室の図鑑に載っていたレアな種も売っているわ。ここは天国!
「楽しそうだな。好きなものを好きなだけ買うといい」
「うーん、迷います。希少な品はそれなりにお値段が高いですし、カゴに入れすぎて破産しそうです」
「そのくらい買ってやる」
さらりと告げて歩きだした背中に言葉が出ない。
用事のついでに荷物持ちを頼まれたのかと思ったが、彼は自分の買い物をするどころか、目を輝かせて出店を回る私についてくるだけだった。
「草の見分けがつかん」とぼやく様子から、あまり興味もないようだ。
「あの、どうしてここに連れてきてくれたんですか?」
「お前が喜びそうだと思っただけだ」