獣人皇帝は男装令嬢を溺愛する ただの従者のはずですが!
「っ!! ……ぅうっ、冷たぁっ」
「はぁ。お前はいったいなにをしているんだ。早く上がれ」
 噴水の冷たさもさることながら、マクシミリアン様の冷たい言葉も身に沁みる。
「は、はい」
 慌ててジャバジャバと噴水の端まで移動し、石組みの縁上に片足をかける。足に体重をかけて乗り上がろうとしたら、横からなにかが跳び上がっていく気配がした。
 え?と思って目線を向けると、なんとマクシミリアン様が空を飛んでいた。
 いや、私とて人間が空を飛べるわけがないのは百も承知だ。しかし彼は、そんなふうに見紛うくらい、普通ではあり得ない跳躍をしていたのだ。
 ……うそ。あんなに高くまで飛ぶなんて!
 私は一連の出来事を縁上に片足をかけた体勢のまま食い入るよう見つめていた。
 マクシミリアン様はかろうじて目視できるくらい遥か上空を浮遊する風船をしっかりとその手に掴み、トンッと地面に降り立った。
 直後、息をのんで見つめていた人々から歓声が沸き起こる。大道芸の比ではない大歓声と拍手喝采が、マクシミリアン様に注がれていた。
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