獣人皇帝は男装令嬢を溺愛する ただの従者のはずですが!
「はぁ~、いいからさっさと脱いで行け!」
「す、すみません!」
 私の願いは通じず、マクシミリアン様は仁王立ちのまま動こうとしない。私は仕方なく服を着たまま逃げるようにシャワー室に飛び込んだ。
「おい、服は!?」
「濡れてますから、中で脱ぎます!!」
「ったく」
 扉が閉まる直前に聞こえてきたマクシミリアン様の特大のため息に、居た堪れない思いがした。

***

 ヴィヴィアンが扉の向こうに消え、脱衣所にひとりに残る。
「……どうしてこんなに危なっかしいのか。これでは目が離せないではないか」
 ……いや、そうではない。
 声にしながら、ふいに問題は彼自身ではないことに気づく。
 面倒に思うなら放っておけばいい。近習に適性がないのなら、早々に切り捨ててしまえばいい。本来、こうも細々と目を掛けてやることではないのだ。
 ならば、ヴィヴィアンのことが気になって仕方ないのは俺だ。彼から目が逸らせず、手を差し伸べずにはいられないのだ。
 ――コンコンッ。
「失礼いたします」
< 167 / 320 >

この作品をシェア

pagetop