獣人皇帝は男装令嬢を溺愛する ただの従者のはずですが!
「ヴ……っ!!」
 呼び掛けようと薄く開いた唇も、音を結ばずに動きを止めた。
 俺は呼吸を忘れ、浮かび上がる清らかな女神のごとき立ち姿に見入った。女神は降り注ぐシャワーを浴びて、真珠のような白い肌と金の髪からキラキラと湯を弾かせていた。
 細くしなやかな肢体はほどよく筋肉がついて引き締まり、スラリと伸びた長い手足や括れたウエストラインが目に眩しい。しかし、なにより俺の目を釘付けにして離さないのは、胸のやわらかなふたつの膨らみと、腰から続くまろやかな曲線。
 甘い芳香まで漂ってきそうな瑞々しい女神の肢体に魅了され、瞬きをする間すら惜しみ網膜上にその姿を刻む。
 ……目の前の光景は、まさに奇跡。
 この世の美しいもの、清らかなもの、目に眩いほどの美を寄せ集めた集合体がそこにあった。
 触れるのが憚られ、だけどこの手でその温もりとまろやかな感触を味わいたい。こんな矛盾が、俺の内でせめぎ合う。
 女神を食い入るように眺めながら、身の内でぞわぞわとした熱が疼きだすのを感じていた。
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