獣人皇帝は男装令嬢を溺愛する ただの従者のはずですが!
 さらにヴィヴィアンへの想いは、日が経つごとに膨らんだ。
 ……手放したくない。俺だけのものにして、ずっと傍に置きたい。俺だけに微笑んで、その声を聞かせて欲しい。
 こんなふうに狂おしいほどにその身も心も欲しいと望みながら、俺は心の底から神という存在を恨んだ。それは、俺に耳を与えなかったことに対してではない。
 何故神は、ヴィヴィアンに女の性を授けてくれなかったのだ。女であれば、俺はヴィヴィアンを生涯ただ一人の妃とし、命果てるその瞬間まで愛し、敬い、共に幸福の道を歩んでゆけたのに、と。
 同時に俺は悟っていた。この後、俺にヴィヴィアンを超える出会いなどあり得ない。だからといって、清らかな彼を俺の浅ましい欲望で汚す気などさらさらない。
 ならば俺は彼への愛を胸に秘め、生涯独り身を貫こう。天に背くこの想いは、墓場まで連れていく。
 ヴィヴィアンのために最善と己を納得させ、身を切る思いで固めた決意だった。そして、これこそが俺が示せるヴィヴィアンへの精一杯の愛の形だと思っていた。
「……だが、ヴィヴィアンが女だというのなら話は別」
< 173 / 320 >

この作品をシェア

pagetop