獣人皇帝は男装令嬢を溺愛する ただの従者のはずですが!
 ヴィヴィアンを俺の手もとに置くことに、もはや障害はなにもない。
「愛するヴィヴィアンを、生涯ただ唯一の伴侶に――!」
 固く拳を握り締めると宙をきつく睨みつけ、新たな決意を噛みしめた。
 ――バタン。
 直後、ノックも無しに外から扉が開かれる。
「おーい、まだかかりそうか?」
「急に入ってくるな! ヴィヴィアンが出てきたらどうする!!」
 反射的に振り返り、のんきに扉に手をかけるガブリエルに向かって声を荒らげる。
 このタイミングでシャワーを終えたヴィヴィアンが出てきては大事だ! 俺は手近な棚にタオルと着替えを突っ込むと、乱暴にガブリエルの背中を押して脱衣所を出た。
「ハァ? お前、なにわけの分かんねぇこと言ってんだ?」
 廊下に押し出されたガブリエルが、眉間に皺を寄せ不満げに口を尖らせる。しかし、脱衣所の扉一枚隔てた先には俺とてシャワーの飛沫でおぼろにしか見ることが叶わなかった芸術品のごとき裸体があるのだ。
 他の男に拝ませるなど、させて堪るか!
「黙れ! ここの君主は俺だ。文句があるならさっさと国に帰れ」
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