獣人皇帝は男装令嬢を溺愛する ただの従者のはずですが!
 ビクリと肩を跳ねさせたヴィヴィアンが、慌てて手を伸ばしてくるのを制し、手ずから丁寧に拭いていく。
「いいから。大人しくしていろ」
「でも、あの……わわわっ」
 頑として譲らぬ俺の勢いに根負けしてか、ヴィヴィアンは口を引き結ぶと大人しく俺のされるに身を任せた。
「おいマクシミリアン、その対応の差はなんなんだよ!? さっき俺に見せた暴君っぷりはどうした!?」
「さて、なんのことか分からんな。……よし、これでいいだろう」
 タオルを下げると手櫛で梳り、指の間を滑っていく艶やかな感触を味わってから手を引いた。
「ありがとうございます」
 ヴィヴィアンは顔を赤くして、蚊の鳴くような声で礼を呟いた。
「なに、しっかり乾かさないと風邪のもとだ。それに、濡れ髪は傷みやすいと聞く。こんなに艶やかで美しいのだから、大事にしなければ駄目だ」
 ヴィヴィアンはただでさえ赤い顔を火が出そうなくらい真っ赤に染めて、コクコクと頷くことで答えた。
「いい子だ。冷えるから入っておけ」
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